④愉快でウザい兄貴たち

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◇ 二日ぶりの風呂は本当に極楽だと、幽玄は骨身に沁みる思いだった。 このお風呂は内湯と露天風呂と二つある。不動一族しか使わない風呂場であった。 たまに誰かが女連れこむこともあるが、そんな他人の痴情など遭遇したくもない。 よって、不運に遭遇しない管理というものは徹底されていた。 そもそも意図的でなければ誰かと風呂場で遭遇することは無かった。 それが今日は──露天風呂へ移動しようと外へ出る。 「やぁ、幽玄久しぶりだね」 何故かそんな声が聞こえて、幽玄は眉間にシワを寄せる。 「いや、今日はなんで……んなものはどうでもいい。なんでここに、。そんなことして死んでも葬儀はしませんよ?」 「ハハハッ、確かにそろそろ限界……かも」 その言葉と共に、湯船に沈んでいく男を慌てて傍で控えていた男どもが彼を抱え上げ、傍のベンチで横にならせ身体を拭き上げる。 その訳の分からない言動の根源──、次男の玉響(たまゆら)は死にそうになりながら、水分補給を行っていた。 23歳になるこの男は、身体が弱く生まれた時から長生きしないといわれ続けている。だが現在もこの通り生存していた。
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