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玉響は確かに身体は弱い。
奇跡ということで、それ以上突っ込む事は誰もしないが、死期については皆覚悟はできている……そんな次男だった。
そんな状態だから、滅多に部屋から出ず、肉体労働はできない。
ただ並外れた知能と、現代では解明できないサヴァン症候群(※1)のような閃きを持っているため、奥座敷でブレーンとして家業を手伝っていた。
そんな玉響が命賭けて長風呂とか、不思議で仕方ない。
(白夜といいゆら兄といい、今日は何だ)
と幽玄はぶっ倒れている玉響を睨んだ。
玉響は傍のベンチで横になり、甲斐甲斐しく世話をしてもらい、水分補給をしていた。
なんで命賭けてこんな茶番をするのか、幽玄は理解できない。
「幽玄は昨日今日と、楽しい事があったらしいね」
横になりながら、目線は幽玄へ向いていた。
その言葉を受けて、幽玄は納得した。
(あーこれは嗅ぎ付けたやつか)
それしか思いつかない。
玉響はこれでも面白い事が大好きなのである。
たまに暇になるとテロ紛いな事をしでかしては、テレビのニュースを見てほくそ笑んでみたりしている。
やることはロクでもないが、茶目っ気はそこそこ持ち合わせていた。
その上、持っている脳の使い方が人とは違う。
変な勘とか、閃きとか、そんなものは人外を疾うに超えていた。
唯一の弱点である、病弱なのが嘆かれる人材である。
※1
発達障害等障害を有する者が、特異的に優れた能力・偉才を示したり、ある特定の分野の記憶力、芸術、計算等に、高い能力を有することがある。
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