110人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
⑤騒がしい日
❖ ❖ ❖ ❖
次の日、幽玄は学校へ行こうと家を出たのは、昼前になってからの事だった。
家の布団は魔の領域である。
バタンと横になって、気が付けばこんな時間だったという顛末である。
真面目な陰キャとしては、無断遅刻は内心に響くこともあり痛手ではあるが、そこは阿紀良が上手く手を回しておいてくれたようである。
布団の中で寝転がりながら、ベッド脇にあるスマホを手に取る。
阿紀良から根回ししておいた、そんな内容なメッセージを受信を確認する。そしてそのまま寝転がり天井を仰いだ。
馴染みのある風景が目の前に存在している。どう見ても自分の部屋である。
凄く安心する、と初めて天井など見て考えさせられてしまった。
今までそんなことなど考えたこともなかったのだが、『居場所』というものは案外必要だと実感した。
何でそう思ったのか分からない。
ただ、自分の常識とは全く違う斑雪の家は衝撃的だったのだ。
今でも何故かそれが離れない。
自分の常識が覆されそうな家だった。それでも楽しそうな家庭だと、それが純粋な感想だった。
変な価値観でも、気にせず臆せず良かれと思えば誰にでも見せることができる斑雪の性格に、幽玄は今までにない衝撃と、幽玄自身が実は世間をどれだけ気にしているかを突きつけられたようであった。
そもそもギャングツインズの姉ということが衝撃だった。
ふと思い出す。
そう言えば、あの有名な双子たちは兎にも角にも……幽玄たちの界隈では有名なちびっ子であった。
いつからか分からないが、ヤクザを見ても全く臆することなく話しかけてくる。
それも最初は邪険に扱っていた組員も本気で『ヤクザが好きで大意はない』ことを知ると、なんだかんだ言って相手になっている。
双子たちを相手しているその場で、下手したら笑いすら生まれる状況は異色だった。
ただ──異色なのだが、それはそれで心地よい。
最初のコメントを投稿しよう!