110人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
その隣では、白夜が嬉々として蹴り上げた足を下げると、仁王立ちをしている。
一瞬何が何だか分からなかった幽玄だったが、二人の存在に気付き呻く。
「兄貴たちの連係プレーだなんて、反則技だっ」
「えっ? ヤクザに一般的なルールを当て嵌めようとするのか?」
覗き込んだ白夜が、腹を抱えて笑いこむ。
その格好は、いつものスーツ姿であった。珍しく家からのご出勤な様子である。
その隣にはパジャマ姿な玉響だった。
そして玉響が赤くなった自分の腕を庇いながら、「折れてたら幽玄処刑な」と物騒なことを言っているが、顔は笑っていた。
玉響はひ弱で、攻撃自体はそこまでの致命傷を与えられない。
だが、自分の体力を使わない古武術をマスターしていたため、相手の力を逆手に取る。
それでもこうやって蹲るのだから、どっちにしても弱いのは確かだった。
白夜一人でも幽玄の相手はできたのだが、今日は珍しく玉響が部屋から出てきた。
引き寄せられるようにどこかへ行くので、面白そうだと付いて来たのだ。
そしたら愚弟がブチ切れる場面に遭遇する。
仲裁に入るのもめんどくさい、と静観していたところ、飛び込んだ玉響の姿を確認して、慌てて白夜も飛び込み玉響を庇ったのである。
白夜は弟たちに贔屓などはない。
自分にとって利益不利益でしか行動しない、そんな薄情な兄でもある。
少なくとも、この程度の仲裁などはまっぴらごめんなのだ。
この場合、白夜はお子様な愚弟の幽玄よりも……ひ弱だが頭脳負け無し次男、玉響の利用価値を取ったまでなのである。
最初のコメントを投稿しよう!