⑤騒がしい日

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「俺はここではユウと呼ばれてる。不動家の三男だ」 「あら、ではこの家の息子ってことね。私は桜子(さくらこ)」 「オレは桜輔(おうすけ)だ」 「お前ら……立派な名前があったんだな」 臆することなく名乗る二人に……幽玄は感心してしまった。 そして……ギャングツインズしか知らなかったが……立派な名前である。 「で、なんでお前らがウチに居るんだ」 感心している場合ではなく……本題を突きつける。 「ちょっと……散歩よっ! そう散歩っ!!」 「そ……そうだっ! 地域パトロールってやつだっ!」 「へーその割にはしょげてウロウロしていたらしいが」 ニヤリと笑い……幽玄はその嘘を否定する。 双子は……言葉を失った。 「散歩だろ? それ喰ったらさっさとパトロールとかいうものへ行くなり、家へ帰るなりしろ」 畳みかける様に……幽玄はそれ以上何も言うことは無いと、踵を返す。 「……仕方ないじゃない……あのクソ兄が帰ってきてるんだから……」 「──……!?」 その呟きは、桜子からなのか桜輔からなのか……分からない程の小さなものだったが、殺気の様な呪の様な禍々しい何かを含んでいた。 とても……幼児が発するものではない。 それは……深く深くに存在する闇のようなものでもあった。 幽玄がそれに勘づいて眉をひそめる。 この程度の闇など……日常茶飯事で、別段真新しくもない。 それ以上の闇の淵を……幽玄は知っている。 それを……一般人、それも幼児が発していることに違和感だったのだ。 また……この双子の兄というのは、斑雪の兄でもある。 知るだけでもクソな男だという認識が……何か引っかかった。
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