⑤騒がしい日

10/11

110人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
「お前らの兄の事なんざ、コッチは何も関係ないが」 幽玄は結論を淡々と伝える。 「そうだっ! 関係ないっ!!」 「こっちの都合よっ!!」 その言葉に、双子は火が付いたように叫び出し幽玄に反論する。 かなり興奮しているのであろう。 肩で呼吸しながら、瞳には悔しさのためか涙を溜めていた。 幽玄はそんな双子を見て、ニヤリと笑みを浮かべる。 「分かり切っているじゃねーか。ならなんでこんなところでチンタラしてんだよ。今更こんなヤクザもんに助けを求めに……とか縋る気なのか?」 「そんなんじゃないわっ! バカにしないでっ!!」 桜子が激怒する。 しかし、桜輔は違っていた。 「お前らに助けてって言ったら、助けてくれるのかよ……」 そんな小さな言葉を幽玄にぶつけてきた。 幽玄は「へぇー」と言いながら笑みを浮かべる。 こいつらにもそんな感情があったのか、と人間臭さを出したことに感心した。 だが、それに気づいた桜子が声を更に荒げた。 「ちょっ! 桜輔っ何言ってるのよっ!!」 想定外だったのであろう、桜子がビックリして桜輔に目を遣る。 そして、腕を掴むと「アンタ何言ってるのか分かってんの!」と引っ張る。 「俺らには関係ないな。それなりの対価積むんなら話は別だが」 畳みかけるようにそう告げる。 兄たちの手前、一応顔を出してその場を収めた。 それで十分だと、ほくそ笑む。 その笑みに双子は感情を再燃させる。 「お前なんかに頼んねーよっ!!」 「いい気になってんじゃないわよっ!!」 なんて、今どき使わない捨て台詞を発して、その場を爆走していった。 二人が去る姿を見送りながら、幽玄は腹を抱えて爆笑する。 「なんだよ、あのセリフ。今どき使う奴とか居たんだな」 そんな揶揄いを含ませながら、只々噴き出し笑い倒していた。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加