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「お前の女の弟妹に、もっと優しくしてやればいいのに」
感情の伴わない言葉に、幽玄は振り返らない。
「覗いていたくせに、意見だけは人の数倍言うんだな」
後ろには、白夜と玉響が面白そうにニヤニヤしながら立っていた。
最初からそこにいたと言わんばかりの存在感である。
「ちゃんと言われたことは果たしました。これ以上は無用です」
幽玄は面白くない。
大体、斑雪についていらん詮索をされることが不愉快だった。
「アイツのお陰で、とんだとばっちりに……」
そんな恨み言を吐く。
「幽玄、お前真面目に学校行くとか言ってなかったか?」
白夜が時計を確認し、指摘する。
時間はだいぶ経過していた。
「まぁ今から滑り込めば三限目には間に合う」
不愉快そうに時計を眺め、それでも行く旨を告げ、幽玄は部屋へ戻っていった。
残されたのは長男と次男の二人。
「なんだろうなぁ、イイ兆しなんだけどなぁ」
「オマエがそう言うなんて、よっぽどなのか?」
玉響の呟きに、白夜は不思議がる。
「そうだね、あの幽玄を手玉に取る女だよ? そこいらと素質自体違う逸材だよね。ただ、まだこの縁が不安定なのは確かだけど」
そう言い、玉響は溜息をつく。
兄としては、この変革に期待したい。
だが、なかなか上手くいかないらしい。
「まぁ、兄その一としては、その時は全力で応援してやるよ」
「へぇー利益しか追及しない人が言いますね」
どうでしょ、と笑っている白夜に、玉響がサラッと突っ込む。
お互い化かし合いは、コミュニケーションの一つと化していた。
化かされた方が悪いという、特殊ルールで繋がっている二人にとって弟の兆しを応援したい事については、珍しく意気投合していた。
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