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⑥変わらない教室の中の違和感
❖ ❖ ❖ ❖
幽玄が重役出勤して着いたのは、予測していた三時間目前だった。
周りには「ご苦労様ですっ! ハハハッ」とバカにされ揶揄われるが、それは学校では陰キャで通しているからであって、幽玄にとっては痛くも痒くもない。
逆に、丸め込んでいると自覚でき愉快だった。
そんな中で、凄い形相で睨みつけている、阿紀良の視線があった。
周りからしたら「あーあ、阿紀良さんに目を付けられて今日は一日パシリだな」と揶揄われ噂されている。
実際、阿紀良は幽玄の事が心配なのだが、この高校生活で思うようにいかない立場が歯痒くて仕方なかった。
それが逆にイライラを増長させている。
クラスのこの異様な雰囲気の中、幽玄は違和感を覚えていた。
(あれ? 不知火斑雪か。何落ち着かないんだ?)
それは不思議と視線に飛び込んできた彼女だった。
今まで全く気にしていなかったし、クラスメイトとしてカウントすら危うかった。
それが、今では何気ない変化が目に付く。
彼女は、何か思い詰めているかのようで、眉間にしわを寄せ考え込んでいる様であった。
だから余計に、幽玄の姿など視界に入っていない様子である。
別に視界に入りたいとか、気づいて欲しいとか無かったのだが、自分の中で消化のできないモヤモヤが気持ち悪くフラストレーションとなっていく。
何気にふらついたというテイでよろけついでに、机を思い切り蹴飛ばした。
──……ガダンッッ!!
響く音と転がる机、一瞬静まる教室内。
誰もがこんな出来事を予測はしていなかったため、ビックリして幽玄をガン見する。
それも発したのが幽玄だったのが、更に意外だった。
だが直ぐにそれがよろけた結末だということに気付き、爆笑が起きる。
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