⑥変わらない教室の中の違和感

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「あれ、不動くん? 大丈夫?」 我に返った斑雪が、改めて幽玄に手を差し伸べる。 その手を掴んだ瞬間よろけたフリをして、幽玄は斑雪を引き寄せる。 「──……俺より気になる事があるんだ?」 不意打ちの様に耳元で囁き、ニヤリと笑う。 斑雪は何が起こったのか分らず、真っ赤になってキョドって飛び退いた。 今まで男の子とこんな絡みなどした事が無い、免疫ゼロの斑雪にとってそれだけでどうしたらいいのか分らず、咄嗟に距離を置いてしまった。 それは些細な事で、周りは気付かない。 まるで周りからしたら、女子が嫌がって距離を置いたとしか捉えられなかった。 幽玄というキャラは、この高校では珍しく真面目で無口、陰湿キャラとなっていたからだ。 「女子にもそれだけ毛嫌いされてたら、救われねーなっ!」 等と揶揄われているが当の本人、斑雪はそれどころではなかった。 純粋に、プライベートスペースなんて軽く飛び越えた距離感に対して、完全に頭が真っ白だった。 「あーらぁー、不知火チャンって案外ピュアとかーいうやつぅー?」 その状況を楽しむのは男子だけではない。 相変わらずのノリ全開で、女子のメンツも揶揄い半分で言葉をかける。 しかし、もうその意図するものは完全に揶揄う以外何ものでもなかった。 幽玄は、自分が作り上げたキャラクターに騙されているクラスメイトでご満悦である。 斑雪は、何で急にこんな事をされないといけないのか理解できず、後退る。 そして意外なパフォーマンスに沸き立つクラスメイト。 三時間目開始が遅れ、何故か幽玄と斑雪が職員室へ呼び出されるハメになってしまった。
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