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◇
この学校では真面目と称される二人組のお説教だったのだが、日頃の行いが功を奏したのか、処罰もなく厳重注意で事なきを得た。
厳重注意と言っても、実際職員室では和やかに問題が終息した。
今まで自分が受けていた対応とは違う対応に、『この程度でいいのか?』と幽玄は教師の対応に不信感さえ感じる。
幽玄は世の中の不平等を再認識するが、そんなものだと割り切っている。
職員室から出て『やれやれ』と思い委員会へ行こうとして、何気に斑雪をみる。
「ごめんなさい。真面目な不動くんの内申を傷つけてしまって、私としたら何てことをっっっ!!!」
等と平謝りしている。
しかし、その謝り方も幽玄など視界に入っていない状態で、独り言に近かった。
どうもパニックに入ると、視界には誰も入らないようである。
まるで自分に酔いしれているようで、幽玄には理解し難い。
(自分に酔いしれるのにも程があるだろう!?)
斑雪の言動にビックリして、幽玄はガン見してしまう。
やはり斑雪は、泣くというより自分の世界に入ってブツブツ言っている方がしっくりくる状態だった。
「おい不知火、戻ってこい」
ついそんな言葉をかけてしまう。
その瞬間、斑雪は瞳を潤ませ幽玄を覗き込む。
「だって! 人様にご迷惑かけないのが、私の信条だったのにっ!! こんな不動くんに、ご……ご迷惑を」
「お、おいっ!! 待てっっっ!!」
そう言うが早いか、再度自分の世界に入ろうとする斑雪。既に視線は幽玄ではなく何処か彷徨を捉え始めていた。
「いや、とりあえず戻ってこいっ! 落ち着けっ!!」
そんな斑雪の状況に、慌ててガクガク肩を揺らす。
「はぁっっっ。あのなぁ、この程度で内申下がっていたらここに居る奴ら、一週間もしないうちに全員終わってるだろーが」
呆れつつも、無意識で斑雪を庇うかのように思った理由を叩きつける。
何故そんな言葉を発したのか、幽玄自身違和感だったが、その時はそんな事を考えている余裕が無かった。
「あ……そっか。そうだ、そうだよね」
その言葉で、斑雪の意識が幽玄の方へ戻る。
だが、戻ってきたことで更に問題が複雑化する。
「そうだよねっ! 不動くんっっ優しーなぁー! 私頑張るからっ!!」
とよく分からない方向へ進み出した。
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