⑦家業の手伝いの中で

1/18

110人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ

⑦家業の手伝いの中で

相変わらず裏路地を闊歩していく。 声を掛けられるのを適当にあしらい、目的地の前に白夜の事務所の一つへ向かった。 滅多に彼のテリトリーには踏み込まないのだが、新店長と会う前に何かしら情報が欲しい。 あの兄に貸しとか嫌でしかないのだが、そんな自分のちっぽけなプライドなんざ、今はどうでもいいと割り切ってしまう。 足元を掬われるのが、一番致命傷となりかねないのである。 こんなことを感覚的に考えるようになったのも、結局は生まれ育った環境に由来すると、幽玄はいつの間にか悟っていた。 ビルの一角。今日はそこに白夜がいることは掴んでいた。 ただし、お伺いは立てていない。 毎回、そんなものなので白夜もどうこう言わなかった。 受付では顔パスで、白夜のオフィスへ通される。 「相変わらず突撃訪問しかしないな、お前は」 等と白夜に皮肉を言われながら幽玄は勝手知ったるかのように、その部屋のソファーにドカッと腰を下ろした。 「今度、新店舗稼働しますよね?」 「あぁ、ソープランドだったっけ」 全て理解しているが、敢えて白夜は言葉を曖昧にする。 そうすることによって、相手の本題や情報を多く引き出し、我がモノとするためだった。 白夜の常套手段である。 「行けと言ったのは白兄です。あの店の店長の情報を全て出してください」 「またそんな『出せ』的な。お前は兄を何だと思っているんだ?」 言い方はまだへりくだっているのだが、態度は全く比例していない。 また幽玄の不遜な態度は、今に始まったものではない。 ただ、放置するほど白夜も甘くはない。 その雰囲気を幽玄は察し、言い直す。 「今から顔を出しに行きます。教えてもらえると助かります」 今度はちゃんと頭も下げる。 白夜は溜息一つ吐き出し、それを承諾した。弟には甘いところもある。 「それでもギリ及第点だぞ」 そんな指摘をしつつ、パソコンを開くと何やらキーボードを叩き出した。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加