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「えっと……最近特に頭角を現してきている奴だな」
無難な話題から、白夜は情報を引っ張り出す。
そんな発言に幽玄のイラ度は徐々に上昇していく。
「問題はそこではないです」
そんな苛立ちをついついぶつけてしまった。
「はいはい、幽玄は案外慎重だからな」
弟の性格は把握している。
せっかちなのも把握済で、敢えてイラっとする発言で挑発してしまうのは白夜の悪い癖だった。
「えーあ……──なーる。ふーん……そーいうこと……ねぇ」
途中から何か引っかかったのか、白夜の独り言が開始した。
幽玄は内心『ビンゴか』と自分の勘を褒める。
白夜が考え事を始めると、この様に独り言にシフトするのは癖の様なものだった。
(なんかイラッとした理由が、ちゃんとあったじゃないか)
幽玄はニヤリと笑い、自分の行動を正当化し評価する。
会う前にちゃんと白夜の情報網を確認しておいてよかったと、今更ながら実感していた。
「で、何がそんなに気になったのですか?」
そのまま放置していても、白夜の得たものは自分には流れてこない。
たまにこうしてお伺いを立てながら、兄の動向を見極める。
「えっ? あー確かにヤリ手なんだけど……この店を開店させるために、無理も結構してるようだな。今までは尻尾すら出さず飄々としていたらしいのだが、各所で燻っているらしいぞ」
「なんか……説明の仕方がゆら兄に似てきましたね」
白夜の抽象的な説明に、幽玄は次男の玉響を思い出す。
しかし、玉響の方がもっと意味不明の説明をしてくる。
白夜の説明の方は、考えて頭の中で咀嚼したら一応理解はできる。
だがもう少し具体案が欲しいところだった。
そんな時だった。白夜が気になる情報を露呈し始める。
「特に女の子探しなんて、結構あくどい手段使ってんな」
そんなことは大なり小なりある事案だろうと不思議に思うが、それを白夜が口にするとまた違ってくる。
「白兄が言う程、そんなに姫探しであくどいことしているのですか?」
「これは既に詐欺紛いではなく『詐欺』案件だし。今までとそこまで変わらないが、無茶もしている様だ。ここまで問題が燻るなんて、コイツ終わったな。だが一番の問題は……ふぅーん、だからなのか」
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