①普段と違う朝

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「仕事帰りなんだよ、別にミリも気にしてねーくせに」 そう皮肉を言い幽玄はカウンターの隅の、自分の特等席に座る。 ランは幽玄におしぼりを渡しながら近づき、スンッと何かを嗅ぐ動作をした。 「微かに火薬と血のニオイがする……」 「察しがいいな」 そう言い、それでも満足そうに幽玄は笑む。 「なるほど~そういう『来店』なら、スペシャルでも提供しなくちゃねぇ」 そんな事を言いながら、ランはニヤリと笑い店員に「アレ持ってきて」と指示を出す。 小さな包みを受け取ると、楽しそうにカクテルを作り、それも投入していた。 「おい、また実験台とか勘弁しろよ。お前じゃなかったら何度三途の川を往復してるのか分からねーぞ」 何やら画策しているのは、目の前で作っていることもあり幽玄は予想はしていた。 このママであるランの趣味が、ドラッグの調合なのである。 ヤバいやつから、本当にアロマ的なモノまで〝何でも御座れっ〟てノリであった。 噂では薬剤の免許を持っているとか。 本物か疑わしいが、別に幽玄にとってはどうでもいいことだった。
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