⑦家業の手伝いの中で

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そのニヤけた笑みに、幽玄の表情が険しくなる。 今すぐにでも視界から消したい衝動に駆られていた。 実際傍にいる阿紀良は、幽玄のゴーサインを今か今かと待っている状態である。 それを幽玄は目で制止している状況だった。 なんでこんな男が伸し上がったのか、幽玄には不思議だった。 一応、白夜には筋を建てておかないと、感情論で好き勝手なエンディングを描いてしまっては後で何を言われるか分からない。 そのまま男の案内で応接室へ向かう。 そして応接室に通されると、不機嫌さそのままでソファーにドガッと座り込んだ。 腕を組みながら「俺も予定が詰まってる。手短にしろ」と、それだけ告げる。 男は笑みを堪えているかのような、不自然な笑顔で「お忙しいところ、わざわざご足労いただき恐悦至極に存じます」と再度深々とお辞儀をする。 「ちょうど今日から出勤の若い子がおります。どうでしょう、ぜひ幽玄さんに……と」 開口一番、想定内な提案をしてきた。 男は言葉を濁し、相手の出方を探っている。 男からしたら、幽玄がこれで易々と喰いつけば儲け物だと思っていた。 この程度で御すれば、組の中で一気に上り詰めることができる。 実際、この男にとって幽玄に出会うのはこれが初めてだった。 噂では、次期組長と言われる三男はまだ高校生だということである。 それなら、多感な時期でもあり、女でも宛がえば上手くいくかもしれない等と、軽く見積もっていた。 いくら歴代の不動一族の中で残忍冷酷な世代と言われていても、所詮は高校生だと高を括っていたのである。 幽玄が何も返答しないうちに、さっさと男は「あの子呼んできて」と控えていた者に合図する。 幽玄はそんな男の行動を静観していた。そして、軽く探りを入れようと口を開く。 「お前って、姫探し自体難しいと言われているこのご時世に、いいオンナばかり捕まえてきたらしいじゃないか。その手腕、ぜひこの俺にもご教示してくれよ」 幽玄が男にそう言うと、ニヤリと笑った。
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