⑦家業の手伝いの中で

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(さて、どう出るか……) この言葉の意味をどう捉えるのか、見物であった。 (用心して、かわすのか。またはこれを足掛かりに、懐へ入り込もうと寄ってくるか) どっちにしても、結末は決まっている。 幽玄を不快にさせ、不動三兄弟に目をつけられた時点で、人生の時は終わりを告げていた。 (今までうまくやっていただろうに? 何に手を出したんだ?) そこが疑問点だった。 今までは上手く立ち振る舞っていたのであろう。別に白夜の不興を買うことも無かった。 それは、法律にモノを言わせる煩い蠅が集ることも無かったからである。 (結局はゆら兄が動いている案件……何故俺にやらせる?) その時点で幽玄は、自分は単なる傀儡だということを悟った。 暗躍している玉響だが、直接何かをすることはあまりない。 裏で手を回すのが常套手段であった。 その玉響が自分を担ぎ上げ何をしたいのか、幽玄には皆目見当もつかない。 ただ言えることは、従っていれば自分は安泰だということである。 「何も特別なことはやっておりません。きっと不動組の御威光なのではないか……と」 男はそう言い、それ以上は言葉を濁す。 幽玄は「ふぅーん」とだけ言い、その場を沈黙が包み込んだ。 「その御威光とやらで、お前はどんだけ……」 と言いかけて、廊下から何やら声がすることに気付く。 それはどうやら穏やかそうな雰囲気ではない。幽玄はそれ以上の会話を止め、扉の向こうに意識を向けた。 「だから言われたように連れてきただろーがぁっ!!」 制止を振り切ってというか、暴れているようにしかみえない叫び声。 廊下での問答に対し、既に阿紀良を筆頭に幽玄の一派は臨戦態勢へ突入していた。 幽玄はただ静かに座って足を組み直す。 「一体、この店はどうなっているんだ?」 視線を、店の責任者である目の前の男に向け、静かに問う。 その声はもう見切ったかのようで、感情も何もない。 それはまるで死刑宣告のように、有無を言わさぬ圧が含まれていた。
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