⑧幽玄の戯れ

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「お前って確か……高校生だったよな?」 その冷たい瞳は斑雪を捉えたまま、改めて質問する。 斑雪はどう答えていいのか迷っていた。 こんな店に高校生なんて普通は考えられない。 そもそも法的にアウトなのは、斑雪でも分かる。 それをゴリ押しで客を取らせるとか、正気の沙汰ではない。 今ここで何を言っても通じないと斑雪は悟り、押し黙る。 「あんなクソな兄の為に、こんなところまでノコノコやってきて頭大丈夫か?」 幽玄は揶揄うかのように、尋ねる。 「そんなっ! 確かにあの兄はクソでクズで本当にどうしようもない人間だけど……」 そこまで捲し立てて……斑雪の勢いは弱くなっていく。 「あんなのでも家族なの。もう家族を失いたくないの……」 そこまで言い、瞳から大粒の涙を落とした。 (両親が蒸発していたな、確か……) 幽玄は記憶から言葉の意味を探り出す。 両親がなぜ消えたのかは、幽玄のネットワークを使えば容易に分かることであろう。 生きているのか、死んでいるのか。 興味は無かったが、幽玄は初めてそんな涙を羨ましいと感じた。 そう思ったことに対して自分自身にビックリし我に返り、思考を修正しようと足掻く。 (いろいろとこいつは俺を搔き回す存在だな) それが正直な感想だった。 今までだってバリエーション豊富な『修羅場』というものには遭遇してきた。 だが、幽玄は何も感じなかった。 それが何故こんなクラスメイトに絆されるのか──? クスッと笑う自分がいるのに気付く。 それが何を指しているのかは、気付くのに時間がかからなかった。 「お前ってホント生粋のお人好しなんだな」 そういうと、手招きをする。 「突っ立ってないで座れよ」 そう言い、幽玄は自分の隣を指すかのように、横の場所をポンポンッ叩いた。
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