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双子たちが兄である颯を嫌いなのは、斑雪も気付いていた。
あの気質な双子だけあって、颯に対しても臆することなく毒を吐く。
それで、大喧嘩になる事も多々あり、仲裁はいつも斑雪の役目であった。
颯が帰ってくると、ロクな事が無い。
それは不知火家での常識だった。
昨日、颯は斑雪を引っ張って嬉々として家を出ていく姿を、双子は目の当たりにしてしまい、不安と予測が付かない事の恐怖でパニックになっていたのだ。
「斑雪、大丈夫だった!?」
「あのクズは死んだ!?」
泣きじゃくりながらも毒舌は止まらない。交互に斑雪の心配を口にして、颯へは毒づく。
斑雪はそんな二人をしっかり抱き締める。
「大丈夫だよ、ちゃんと帰って来たでしょ?」
そう言い、背中を擦った。
それだけで二人は安心する。
「斑雪、ちゃんと洗い物しておいたぞ」
「卵焼き作ったからご飯にしよ」
待つ間、家の手伝いを欠かさなかった双子は、立ち上がると台所に置いてあった卵焼きを持ってきた。
出来栄えは、所々焦げているスクランブルエッグだった。それでも斑雪にはご馳走に見える。
「ありがとう、美味しそうだよっ。ご飯にしようね」
頭を撫でながら浮かべた涙を拭いて斑雪も立ち上がる。そして楽しそうに三人は台所へ入っていった。
❖ ❖ ❖ ❖
次の日は土曜日で、双子たちは少し早めに保育園へ送り出された。
その後、家事をこなしながら斑雪は昨日言われた『迎えに行く』という言葉が何時を指しているのか、時計を眺め考え込む。昨日は時間までの指定は無かった。
迎えまで寄こす事を考えて、斑雪はその先に何があるのかと不安しかない。
昨日は風俗店で犯されかけたばかりである。
気が重いのが本心だった。
「仮病とか……通じるかしら」
そんな小学生な事を考えるが、ドタキャンした時点で命が無くなる危険性も感じて、慌てて頭を横に振る。
今の斑雪には、回避方法が見つからなかった。
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