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「お前の家の住人は、兄貴からガキんちょまでおめでたい奴らの集まりなんだな」
阿紀良はそんな皮肉を漏らすが、今まで謎だったことが解明でき、何となく納得した。
何かしら理由があって、今に至るわけである。
そんな話をしながら気が付けばクルマが停車する。
止まって少しししてから、自動ドアではないはずのクルマのドアが勝手に開いた。
不思議そうな顔をして、斑雪はクルマから降りる。
そこは大きな屋敷の隅にある駐車場の一角だった。
テレビでしか見たことの無いような白塗りの壁が道に沿って永遠と続き、境界線を誇示していた。
それだけでも、この敷地内は相当の豪邸なのは斑雪でも容易に想像がつく。
そして、クルマから降りた場所には、数人のスーツ姿の男が待機していた。
見た目からカタギではなさそうなのは、雰囲気で分かる。
斑雪はこの一件までは、ヤクザに嫌悪感など無かった。だから怖いと思ったことはない。
いつも母親が『人は見た目で判断はできないものよ』と言って笑っていたのが印象的だったからだ。
多分、普通の一般人が連れてこられてこんな所に放り出されたら委縮して震えているだろう。だが斑雪にはそんな感覚は生まれない。
この場所が珍しいことは確かだったこともあり、キョロキョロと物珍しく辺りを見回している。
そんな斑雪の行動など気にもしない阿紀良は、降りて早々扉を開けた男に「ユウは部屋か?」と尋ねる。
「離れの方に」という返答を聞き、振り返ると斑雪を呼んだ。
「おい、行くぞ。ボサッとするな」
一言そう告げ歩き出す。
斑雪は慌てて阿紀良の後ろを付いて歩いた。
裏口だという大きな勝手口から中へ入る。
歩き出した阿紀良の傍を歩いている男が、耳打ちするように話す。
「そう言えば、阿紀良さんへ言付けが……」
「オレにか? 誰から」
「はい、玉響さんです」
玉響という言葉を耳にした阿紀良が「あー……」と呻き何か言いたそうだったが、その言葉は長い廊下に消え去っていった。
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