⑧幽玄の戯れ

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阿紀良は苦笑いしながら、宙に視線を泳がせ頭を掻く。 何で見つかったのだろうか、と不思議で仕方ない。 今日だって、幽玄から極秘にという言葉を受けてこっそり出かけたのだ。 それも裏からである。 普段部屋から出ない玉響が何故気付いたのか不思議で仕方ない。 その玉響から寄る様に言付けが回ってきた。 (絶対興味はコイツだよな……) それは間違いないと溜息を吐いた。 幽玄のところへ先に連れて行って、それから玉響のところへ寄る方が堅実だと悟る。 「玉響さんにはすぐ行きます、と伝えてくれ」 そう(ことづ)ける。それから斑雪に『さっさと付いて来い』と面倒くさそうに言い歩き出す。 斑雪は言われるがまま、路地らしい細い道を歩き出した。 少し歩くと、開けた場所にその離れは存在していた。 離れといっても、立派な建物である。斑雪の掘っ立て小屋なんて比にならない荘厳な佇まいだった。 玄関だって、ちょっとしたものである。斑雪は最初ここが本宅だと思っていた。 「凄い豪邸ねぇ」 そんなことを斑雪は呟き、阿紀良がビックリして振り返る。 「はぁ? ここ離れだけど」 「はな……れ……ですか」 斑雪はそんな阿紀良の言葉がピンとこない。離れとは何ぞや? という疑問しか浮かんでこないのである。 「ねぇ恐神くん。離れとは……何?」 その延長線で、斑雪は尋ねる。 「離れ知らねーのかよ! あーもうっ! 言うなれば別宅みたいなものだ。お前のその頭脳だったら『別荘』とでも言ったら理解できるか!?」 「えっ? 別荘? じゃあ家って別にあるの?」 「見えているだろ?」 斑雪はポカンッとしながら、言葉の意味を探る。阿紀良は顎でその場所を指した。 離れとは渡廊下で繋がっているその建物は、規模が違い過ぎて建物と認識していなかったようであった。
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