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⑨関係性の確立
母屋の外壁を見回りながら斑雪は呆気に取られているかのように口を開け放心状態だった。
「あーうん、そうなんだー。へぇー」
心ここに在らずといった感じで、カラ返事をする。
「豪邸なのはイメージしていたけど、こんな感じだとは思わなかったかも」
それが正直な感想だった。
「お前……バカにしてるのか?」
「えっ? ううんっ! 違うよっ!!」
その言葉にイラッとして阿紀良が睨む。
斑雪は慌てて違う事を猛アピールしていた。
「お前んちのそれと一緒にするな」
溜息交じりで離れの中へ入ると、斑雪も後に続いた。
「お邪魔します……」
本当なら遠慮して帰りたいのが斑雪の本音だった。
それも叶わないのは理解している。諦め感覚で付いて行き、部屋の中へ入っていった。
離れというものが、どんなものか分からないが、斑雪からしてみれば一言でいうと本当に『別荘』であった。
「普通のお宅なのね」
そんな感想を述べながら、廊下を進み部屋の扉の前で立ち止まった。
「ユウ、連れてきたけど」
ノックをしながら阿紀良はそう告げる。
「入れ」という返事を待ち、阿紀良は慣れた手つきで扉を開け、斑雪をに視線を向ける。
無言の圧は「入れ」と言っている様で、斑雪は恐る恐る部屋の中を覗いた。
その部屋は一般的なそれと変わらないリビングのような造りだった。
ただ一つ違うのは、部屋には巨大スクリーンでプロジェクターが設置されている。
それで映画を観ている、まではよかった。
観ているのが何故かホラー映画なのである。
斑雪が入った瞬間、音響も充実しているこの部屋に大絶叫が響き渡り、斑雪はビックリして小さな悲鳴を上げる。
何が何だか訳が分からない斑雪は、入ったその場で固まってしまった。
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