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「ユウ、その朝からホラー系とか何とかしてくれ」
阿紀良は小さく息を吐いて、部屋の電灯をつけた。
「ほら、言われたお使い行ってきたぞ。オレは謎に玉響さんから呼ばれてるから行くけど」
「ゆら兄が呼んでる?」
そのワードに喰いついた幽玄は、「またか」と言いながら、諦めているかの様にその視線をスクリーンから外した。
「相変わらずの勘が鋭過ぎて、人外としか思えないな、ホント。白兄といい、面倒くさいやつばっか」
そんな愚痴をポロッと吐いて、阿紀良に『行ってこい』と手を振る。
部屋を出る時、阿紀良はチラッと斑雪を見る。見るというより睨むという言葉の方がしっくりくるほどの圧を感じ、斑雪は縮こまった。
そして、阿紀良が出ていってから改めて部屋を見回す。
プロジェクターを操作している幽玄以外には、誰もいない。
そこで初めて、昨日の悪夢が再来する。
おろおろしながら落ち着きのない斑雪を横目に、幽玄は立ち上がると、ダイニングキッチンへ移動し、慣れた手つきで棚からマグカップを出してくる。
そしてキッチンにセットしてあったコーヒーサーバーから、コーヒーを入れ「お前砂糖とかミルクとかいるのか?」と尋ねた。
「あ、ミルクも砂糖もいる」
甘いもの好きな斑雪は条件反射のように自分の好みを告げる。
「それならそこあるやつ好きなだけ入れろ」
そう言い、机の上に置いてあるそれを指した。
そしてコーヒーの入ったマグカップにティースプーンを入れ、持ってくる。
歩きながら「お前ずっとそこに立っているつもりなのか?」尋ねるが、あからさまに揶揄っているのは斑雪でも読み取れた。
仕方なく、幽玄の座っていた場所とは斜めな角度のソファーにちょこんと座ると、幽玄の差し出したマグカップを受け取った。
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