⑨関係性の確立

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「お前……何でもお気楽に『たぶん何とかなる』的な思想どうにかしろよ」 その言葉に苛立ちが含まれているのを、斑雪は敏感に感じ取る。 「でも……」 「それなら、お前は家族の為なら何でもホイホイ言うこと聞くのか? 自分一人が犠牲だと本当に思ってるのか?」 斑雪はその言葉で、顔を上げる。目の前の男の瞳はどこまでも暗く深い闇だった。 今までこんな目を見た事が無い。 どう返答していいいのか悩み、言葉に困る。そして成す術もなく黙ってしまった。 「お前一人が犠牲になって、皆がハッピーになるんなら、風俗に沈もうが臓器売ろうが何してもいい。そう思ってんならそうしろよ。だが……お前にとって家族ってあのクズな兄だけなのか?」 「…………」 「それでコト済むなら、俺が好きなだけ手を貸してやる」 その瞳は揺らぐことはない。 斑雪が頼めば、今まで言った事は全て現実になるのであろう。 単なる脅しでも何でもないことは、その眼が語っている。 幽玄は、そこまで言って一呼吸置いた。 (こいつは結局何も選べない) それは分かっていたことだ。もし選択することが出来れば今は違うものになっていただろう。 それは全て分かり切っていた事だった。 (まぁいいか) 想定内な反応に、幽玄の意識は闇の淵から戻る。 (面白そうだから、いいか) 昨日の反応を思い出して、ぷっと吹き出した。 ちょっと煽っただけで、あんなに焦る初心な反応が新鮮だったこともあったが、それ以外にもあることまでは気付かない。 それはちょっとした暇つぶし程度だった。 「俺がお前を飼ってやるよ」 「え……はい?」 びっくりした斑雪が幽玄の顔を更にガン見する。全く持って何を言っているのか理解に苦しみ表情が歪んでしまう。 今まで暗く沈んでいた瞳は、いつの間にか光を取り戻していた。 目の前には、面白そうなオモャを見つけた子供の様に面白がる男が居た。 「あの……飼うという言葉の意味が分からないのですが」 恐る恐る言葉の意味を探る様に尋ねる。地雷を無まないように、細心の注意を払う。 「言葉のままだ。お前面白そうだから」 そう言って幽玄はニッと笑った。
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