⑨関係性の確立

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斑雪にはさっぱり何が何だか分からない。 それが何の意図かすら読み取れず困惑する。 (飼うということは、何か芸とかしろってやつかしら) そんなことを考え恐る恐る口を開く。 「あの……私、何も喜ばせる芸とかできないんだけど」 「は?」 斑雪の大真面目な発言に、逆に幽玄は意図が汲み取れず素っ頓狂な声を上げる。 (何が……言いたいんだ?) 理解しようと考えを巡らすが、該当が見当たらない。 「お前、何か勘違いしてないか?」 「え? 喜ばす事っていったって、面白い一発芸とか無理だし」 幽玄はその返答で笑い出す。 「なんでそんな展開になるんだよっ! お前の思考回路面白いなっ」 ひとり大笑いしている幽玄に斑雪は、勘違いだと気づき羞恥で赤くなる。 「だって!! なんか猿回しとかそんなの連想しちゃったんだもん」 「はぁ!? 猿回し!! ムリムリムリムリムリムリっ! 腹が死ぬっ」 斑雪は笑い続けている幽玄に、ムスッとして真っ赤なまま俯く。 「お前ってホントにおもろいよな」 一通り笑って、「そんなこと求めねぇよ」と答え、「いや、たまにはいいかも」とまた笑い出す。 幽玄は久しぶりに笑った気がしていた。 何時からだろうか、笑うことも無くなり淡々と生きていた日々を思い出す。 なんで、そうなったのか。 考える事も面倒くさくなって、止めていたのだった。 「俺の暇つぶし要員だ」 一通り笑い倒して、幽玄がそう告げる。 「暇つぶし要員?」 「簡単に言えばオモチャだ。大抵の遊びはもう飽きたしな。こんな変わり種いじるのもいい暇つぶしになるだろうしな」 斑雪という一般人には理解できない。「はぁ」としか言いようがない。 それを幽玄は肯定と捉えた。
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