⑨関係性の確立

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斑雪はその流れに対して最初呆気に囚われてしまっていた。 この状況に覚えがある。 それを考え、思い出す。 「あっ!! ちょっとそれは……既に先約というか……」 学校で幽玄に同じような事を言われたことを思い出し、焦り始めた。 幽玄は訝しげに斑雪を見つめ「じゃあ、借金どうにかできるんだな」と念を押す。 斑雪はその言葉に「いえ、それもちょっと……」と言葉少なく答える。 何となく悩んでいる内容は幽玄にも察することはできた。 学校での幽玄との口約束を反故にしない心意気が、何故か心地よい。 自然と口角が緩む自分がいた。 「別に24時間尽くせとは言わないぞ。学校生活は免除してやる」 そういうと、幽玄はクククッと笑う。 「何か気になる事があるのか?」 敢えて突くかのように、斑雪に対して疑問を投げかける。 「あーうん、クラスメイトとの約束があるので」 隠すことなく、斑雪はそう断言した。そして何となく同じニオイに気付く。 「そうか……あなたと不動くんって似てる。っていうか、同じ苗字?」 あれれ、と不思議そうに考えながらガン見する。 「そいつも不動って言うのか?」 「あーうん、もしかして親戚とかで高校生っていたりします?」 「さぁ、俺は知らないけど」 敢えてとぼけて見せるが、その顔は何故か楽しそうだった。 バレそうでバレないギリギリが何故か心地良い。 バレてしまえば終わりなのに、そんなことが気にならない不思議な感覚だった。 何がそんなに感情を高揚させるのか、幽玄には分からない。 普段ならそんな感情に翻弄それること自体不快でしかなく、ブチ切れる元凶でもあった。 阿紀良が居ないこの場で、そんなことになったら止める者がいない。 危うい状況なのだが、そんな危機感に気付く者など居らず、今は幸いにも問題にならない。 そんなことを知る由もない斑雪だったが──それ以前に幽玄の感情は穏やかだった。
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