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「話がある」
そういうと、三人に意識を向けさせる。
白夜と玉響は察したのか、その言葉に抗うことなく向き合う。
幽玄は動かしていた箸を止め、顔を上げた。
「最近どうも不穏な空気が漂っているらしい。お前らも注意しとけ」
直ぐに白夜と玉響はそれが何かに気付き、反論することなく「わかった」と返答する。
幽玄だけが、意味が分からず首を傾げた。
「ふおん……?」
「簡単に言えば、僕たちに対して攻撃してくるバカがいるってことさ」
玉響が噛み砕いて説明する。
そんなことは今までも色々とあった。
何故今更警戒するのか、幽玄には分からない。
「そんなの、いつもの事だろ?」
「んーまぁ、それはそーなんだけどな」
白夜は立ち上がると、幽玄の頭をガシガシに撫でる。
「お前が一番弱っちぃからなぁ」
そんなことを呟きながら苦笑していた。
「オレは問題ないだろう。普段通りに過ごさせてもらうから。幽玄だけだな、注意するのは」
そう言い、「大学行ってくる」と締め括るとさっさと出かけてしまった。
「そうだね、僕は論外だし……。幽玄だけかなぁ、後で僕の部屋へおいで」
玉響も続くように立ち上がる。
「親父さん、もうこれでいいだろ? 僕も失礼するよ」
その言葉に組長は無言で朝餉を進めている。
その態度はいつもの事で、全く気にしていないかのように、玉響も退場してしまった。
幽玄が残され、気まずい雰囲気が流れる。
父親は嫌いではない。ただ苦手なタイプではあった。威厳とも違う何か独特な雰囲気が、子どもであっても接することを躊躇う。
「お前は常に阿紀良と行動を共にしとけ」
そう言われ何となくその場の空気を察した。
「わかりました」
そう告げると、残りのご飯をかけ込み、逃げるかのようにその場から離れてしまった。
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