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玉響は普段から余り部屋から出てこない。
それは今も昔も変わらず……。
幽玄も用事が無ければ行くことは無い。
だが、だからと言って関係は良好で、別に嫌悪感があったり険悪ではない。
今も疑問点が生まれたから聞きに行こう、その程度だった。
白夜に至っては、家にあまり帰ってこない。
携帯に連絡してもいいのだが、そこまでして知り得たい情報でもなかった。
「ゆら兄、ちょっといい?」
一応ノックして、隙間からじーっと中を偵察する。
玉響の部屋は不動家のブラックボックスであり、幽玄も何があるのか把握しきれていない。
幽玄も一応用心は怠らない。
「ん、幽玄? 何か用?」
薄暗い部屋の奥から、玉響が手招きしている。
幽玄はいつもの定位置である椅子に座ると、玉響の行動を眺めていた。
「ゆら兄って何してんの?」
「んー簡単に言えば小遣い稼ぎかなぁ」
そんな事を言いながら微笑む玉響はいい顔をしていなかった。
またロクでもない事をやってるのか──と推察するが口には出さない。
いつもの如く犯罪めいたものであっても、玉響がヘマをする未来が視えないからだ。
そして玉響の小遣い稼ぎの金額の桁も大体幽玄は把握していた。
とても中学生が扱う額ではない。
手にした金はギャンブラーのように次へ投資し……負け知らずの玉響の懐は常に右肩上がりであった。
しかし、玉響は画策するのが楽しいらしく、溜まっていく金には興味が無かった。
『好きなだけ使っていいよ』とよく言われ、幽玄にもお小遣いをくれるが、別に幽玄も何か欲しいとかはない。駄菓子屋へ行く子どもの小銭とは桁が違う。
渡されたカードは今でも仕舞ってあった。
小学生が使えるシロモノではない。
どうやらたまに白夜が投資の為に、纏まった額を奪取する程度であるらしい。
それでもこうやって引きこもって色々な事をやって楽しんでいる。情報操作も長けたものであった。
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