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お兄ちゃんが妊娠した。
相談したいことがあると言われてアパートまで会いに行ったら、大きなお腹を抱えて立ったり座ったりするだけでも大変そうだった。
「俺、しばらく入院することになるから。けど両親には言わないでくれよな。もし聞かれたら知らないってごまかして」
「待って待って! どういうこと? 説明してくれなきゃわからない」
お兄ちゃんは大学生で、3つ年上の女の人と学生結婚してる。
お兄ちゃんだけが学生で、相手の人は駅前の英会話スクールの講師をやっている。国際結婚だ。
「俺とレイラの子だ」
レイラさんというのはお兄ちゃんの国際結婚の相手の名前だ。でもなんで妊娠しているのがレイラさんの方じゃなくてお兄ちゃんなの?
「大学では腹に腫瘍ができて、今度摘出するということにしてる。妊娠したと言っても信じてもらえないだろうから。でも親にはその話はしないでいてくれ。病院に押しかけられるとややこしいことになる」
「待ってよお兄ちゃん。言ってること変だから。男の人が妊娠できるわけないじゃない」
お兄ちゃんのお腹にできたのは本当は大きな腫瘍で、病院ではそれを摘出するというのが正しい認識で、お兄ちゃんは自分が妊娠したと妄想しているだけじゃないんだろうか?
「まあ確かにそうだよな。いきなり信じろって言われても無理だよな。もうすぐレイラが帰って来るから、レイラから説明してもらうか」
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