リップ

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 4月中旬、暖かい陽気になってきた頃、彼からデートのお誘いが来た。 『週末、デートしよ?』  昔はこんな言葉言えなかったのに、恋愛にも興味なかったのに。  たった数年で、こんな人は変わるものか。  そんなことを考えながら、返事を送る。 「いいよ」 『マジ? じゃあ、駅前でいい?』 「うん」 『楽しみにしてるー』 「私も」  何だかんだ言いながら、楽しみなのは同じ。  私はクローゼットを開け、週末のコーデを考え始めた。どんなのが良いかな、結構あったかいし……あ! このワンピース着よっかな。  黒色だけど、後ろにリボンがポイントのワンピースを取ろうとすると、上の棚が目に入った。 「これって……卒アルとか入ってるやつだっけ?」  ワンピースを取るのをやめて、上の棚に入っていた思い出箱を代わりに下ろした。 「ついつい、違うことをしちゃうんだよねえ」  箱のふたを開け、中に目を通す。  小中高の卒アルに、写真、懐かしいものが溢れだす。 「あ! これ、桐斗達の写真じゃん!!」  中学の修学旅行の班写真だった。馴染みのある友達と写っている写真を見て、そのときの風景を思い出した。  そういえば、まだ桐斗ったら恋愛のれの字も知らない中学生男子だったなあ。でも、高校生になったら変貌っぷりが凄かったけど。  人をいじるのが好きで、やんちゃで、結局不良になって。  甘い言葉を(ささや)いて、女子達とたちまち虜にし始めて。  それくらいに付き合い始めたんだっけ?  ギャップに負けたんだよねえ、確か。  つい、思い出に浸っている自分に我に返り、箱のふたを閉じた。 「だめだめ。思い出に浸ってる場合じゃない。早く、コーデ考えないと」
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