当日

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「めっちゃ、綺麗でしょ?」 「ほんとだ~!!」  季節の花が咲き乱れた庭園、小さな水車もあり、私が一度は行ってみたいと思った場所だった。 「言ったっけ? ここに行きたいって」 「うん、めっちゃ昔に」 「よく憶えてたね、私憶えてないもん」 「なんか、記憶に残ってる」  黒のフレンチコートを羽織った彼は、遠くを見つめながら答えた。 「ありがとう」 「え?」  動揺を隠しきれていない彼は、はにかんだ。 「憶えててくれて、ありがとう。嬉しい」  珍しく素直に伝えてみた。 「え、あ、うん……」  いつも余裕そうなのに、いざ、言われるとはにかむ彼が愛らしい。だから、たまにからかってしまう。 「可愛いね、桐斗は」 「バーカ、そっちの方が可愛いし」 「ありがとね」  お互いにからかいながら、庭園を見て回った。  
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