第二の手紙

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 先日、屋敷の使用人として働いていた女性が、お暇を出されたようです。彼女(キヨちゃんと言います)は私と年が近く、私が結城家に嫁いできた時から、なにくれとなく世話を焼いてくれておりました。私は彼女のことを「キヨちゃん、キヨちゃん」と姉のように慕い、キヨちゃんの方も私のことを妹のように優しく接してくれました。  主人にも「君たち二人は、前世で姉妹だったのかもしれないな」とからかわれるほどです。  ですから今回のことは、とても悲しくてなりません。  私がキヨちゃんの悩みを、もっと親身になって聞いてあげれば、こんなことにはならなかったのでしょうか。  亡きお父様は、「人の痛みに寄り添える人間になりなさい」と、幼い私たち兄妹によく言い聞かせておりましたね。お父様との思い出がほとんど無い私にも、この言葉だけは心の奥深くに刻み込まれているのです。  それなのに、私は彼女の苦しみを分かってあげることが出来なかったのでございます。  ああ、ごめんなさい。訳も言わずにこんな感傷的ことを一方的に話されても、困るでしょう。心に浮かんだことを、取りとめもなく書きつけるというのも、あまり好ましくありませんね。
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