第2章 あなたはだぁれ?

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「そういえば、智花さんはご主人とはどこで知り合ったんですか?」 「あら、響子ちゃんは知らなかったのね。桐生コーポレーションは知ってる?」 「はい、桐生コーポレーションと言えばうちの大きな取引先ですからね、もちろん知ってます。」 「以前副社長の秘書だった時にね、副社長について桐生コーポレーションに行ったときに向こうの専務さんと仲良くなってね、息子はどうかって言われちゃって…で、お見合いして結婚したってわけなのよ。」 「え~っ、お見合いなんですね。お見合いっていうことは、場所は高級ホテル、着物を着て、最後に『あとは若い二人で…』といって2人きりにされて緑豊かな日本庭園を散策するっていう?」 響子ちゃんのお見合いのイメージが私と同じだった。 もちろんそのイメージのバックには鹿威しの音が響いている。 「あはは、私も初めはそのイメージだったのよ。 でもね、向こうの専務さんもそんな堅苦しくなくていいからと言ってくださったのでね、彼も堅苦しいのは苦手だっていうから。 はじめからふつうに約束して2人だけでレストランで会ったのよ。高級レストランではなく、普通のレストランで…年も近いし、話も合うので会わせてもらってよかったなって思った。そのあとはまぁ気が付いたら結婚までとんとん拍子だったのよ。家事も2人で協力してやろう、仕事も続けていいからねと言ってくれるから、結婚してもいいなって思って…だからまだまだ働くわよ。」 そういうと智花さんは細くて白い腕を上げて力こぶを出すふりをした。 「将来的には智花さんも桐生コーポレーションに行くとか?」 響子ちゃんが鋭く突っ込んでいく。そこは気になる。 「私の夫は専務の息子と言っても別の仕事をしているからね~桐生コーポレーションにいるわけじゃないのよ。自由にやりたい仕事をしている人だからね。まだしばらくは私が安定した仕事についていたいと思ってるのよ。ま、私の話はこれぐらいにしておきましょう。」 そう言って智花さんのご主人の話は切り上げられた。 いつも智花さんのご主人の話になると途中で切り上げられてしまうな~もっと聞きたいのに。
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