第9章 彼氏?仮彼氏?

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「着信拒否って…そこまで嫌なわけじゃないですよ。来週末も会う予定があるぐらいで仲が特に悪いというわけでもないんです。ただ妹が結婚したぐらいから私にも結婚、結婚とうるさくて。結婚するのが一番の幸せと言わんばかりなんですよ、私の母親。」 俺の母親も俺が大学を出たあたりからうるさく結婚結婚というようになったな。母親と同じようないわゆる家柄重視の結婚を。俺がそういう結婚をすることで、自分の結婚のリベンジをしたがっている母親。かおりも同じようなことを言われているんだろうか。 「結婚したくないのか?」 「したくないわけではなく、まず私は今誰とも付き合っていません。一人じゃ結婚できないじゃないですか。それに彼氏がいないならお見合いをしろともいわれるけど、それも嫌で嫌で。私は自分が心の底から好きになった人と結婚したいんです。運命を信じているわけじゃないけれど、まぁ運命の人を待っていると言いますか…」 まさかかおりの口から『運命の人』という言葉を聞くとは思わず、驚いて一瞬時が止まった。が、これはきっと俺にとって大きなチャンスだ、そう思った瞬間一気に時が動き始めた。 「かおりは母親から早く結婚するように言われているんだな。恋人がいないならお見合いでもしろと。」 「あ、はい。」 「わかった、俺が助けてやろう。」 よし、これがきっと一番いい作戦だ。 「俺がお前の彼氏になってやる」 彼女が断らないことを期待しつつ、言葉は強く、断言するように彼女に伝えた。このほうがきっと彼女は断りにくいだろう。きっと『ありがとう』と帰ってくるだろうと期待して…
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