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─2─
「まただ……」
また同じ夢。しかし、一つだけ違うことがあった。それは、今まではただ一本道をひたすら歩く夢だったが、今日は分かれ道が出てきたのだ。
そして、その分かれ道の片方は、まるでこっちに進めと言っているかのように、燦然と光輝いていたのだ。もちろん俺は、輝いていた左側の道を選んだ。
選び、そちらの道へ入った途端、いつもと同じようにただの一本道となり、ひたすら歩く夢に戻った。そして、目が覚めた。
わけはわからないが、なんとなく悪い気はしなかった。ただ一本道を歩くより、選択肢が現れ、それが光輝いていたのだから、なにかの予兆ではないかと、どうしても思わざるを得ない。今の状況を打破できる、いい予兆だと思いたい……
今日は、朝から会議があることをすっかり忘れていて、車で出勤することになってしまった。ガソリン代を節約するために歩いているのだが、今日は仕方ない。幸い、職場まではそう遠くはなく、車で行けばすぐに着く。
しかし、いつも通る、アパートを出て右側の最短の道がビル工事で渋滞になっていた。仕方なく、いつもは滅多に通らない左側の道を通ることにした。
なんとか無事に間に合い、駐車場に車を止めていると、救急車が二台連なっ走って行くのが見えた。
「二台? 何か大きな事故でもあったのかな」
すると、同じく出勤してきた上司が慌ててこちらに向かってきた。
「おい、大丈夫だったのか?」
息を切らし、心配そうな顔で話かけてきた。
「えっ?」
俺は意図がつかめず、困惑していた。
「笹垣がいつも通ってる道で、ビル工事やっていただろう? そのビルの上にある重機が落ちてきて、車に直撃したんだよ」
──言葉を失った。確かに、工事中で渋滞を避け俺は左側のルートを今日は通ってきたのだ。
「渋滞を避けて、違う道で来たんです……」
「おい、九死に一生を得たな。よかったよかった」
上司は俺の肩をトン、と叩き、店へと入っていった。
危なかった……あの時、左の道を選択していなければ俺は今頃……
考えるだけでもゾッとする。あんな高いビルから重機が落ち、直撃……まず助からないだろう。
「こんなこともあるんだな……」
安堵し、足早に会議室へと向かった。
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