選んだ道

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─1─  夢を見る。  どこまでも続く一本道を、ひたすら歩く夢を。  家も何もない。  周りは暗く、その道だけが照らされている。    「今日も同じ夢だ……」  かれこれ、一週間は同じ夢を見続けている。  はじめは、同じ夢などたまには見るし、たいしたことではないと気にも留めてはいなかったが、こうも続くといよいよ不気味に感じてくる。  辺りは暗いせいで、進んでいるのかさえわからない。  何か意味でもあるのか、それとも、最近の激務で精神が疲れ、まいってしまっているのか……  俺は、笹垣小太郎。二十六歳で車販売のセールスマンだ。そして、俺には可愛がっている弟がいて、今年成人を迎える十九歳。歳が離れているせいか、俺によく懐いていて非常にかわいらしい奴だ。    ここ最近、俺はノルマを達成できず伸び悩んでいる。このせいであんな意味ありげな夢を見るのかもしれない……やれやれだ。  入社した時は、やる気に満ちており、その年の年間MVPにも選ばれ、社内でも期待の新人としての声が多かった。しかし、俺は凡庸だったのだ。競争心を煽る為に貼られているグラフは、今や、一番背が低い。上司にはねちねち嫌味を言われ、後輩には、仕方ないですよ、と慰められる始末だ。  ──同じ夢を見るのは、これが原因だな。もう少し続くようなら一度病院にでも行ってみるとするか。  
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