終章 その先へ

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終章 その先へ

   ◆ ◆ ◆ 「どうしてお前たちまでここにいるんだ」  約束していた、茂彬の休日。  小夜が列車に驚いていると、淑子と春敬が現れた。 「創立記念日でお休みだからです!」 「ははは。淑子さんだけを行かせる訳にはいきませんからねぇ」 「あ、あの、旦那様」  小夜が茂彬と春敬の間に割って入る。 「大勢の方が楽しいですよ、きっと」 「くっ……」 「横浜ってのは文明開化の最先端だって噂でしょう。おいらもどんなところか一度見てみたかったんでさぁ」 「ふん」  茂彬は何かを言いたげだったが、耐えるように口を噤んだ。 「小夜さん」 「は、はい!」  以来の再会に、小夜は肩をこわばらせる。  しかし淑子は勢いよく小夜の手を取った。 「私たち、きっといい友人になれる気がするの。よろしくね」 「こ、こちらこそ」 「それに、からね」 「いえ、そんな……?」  勝負の意味が分からず首を傾げる小夜。  その髪の毛には、べっこうの簪が戻っている。 「さぁさぁ、行きますよ! とっとと行っちゃいましょう!」  何故だか春敬が先導する。  淑子も淑子で、茂彬ではなく小夜の手を引っ張って歩き出した。  慌てて小夜は振り返る。  茂彬は眉間に皺を寄せていた。  しかし小夜と視線が合うと、柔らかく微笑むのだった。    了
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