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序章 出逢い
月が妖しいほどに輝く晩のことだった。
細い路地を歩く青年の前に、突如、黒装束に身を包んだ刺客が現れる。
「お命、頂戴いたします!」
若い女性の声は目的を告げ、両手から人形の式札を放つ。式札は小さいとはいえ意志を持ったかのように青年へと向かっていく。
青年は動じることなく、懐から呪符を取り出した。
「〈呪符退魔、急急如律令〉」
ぼっ。
式札は青年に届く前に燃え尽き、刺客は一瞬動きを止める。
青年はその隙を見逃さなかった。
瞬時に間合いを詰め、刺客の背後へと回り込む。
「誰の差し金かは知らぬが、私を狙うにしては弱すぎる」
青年の手刀によって、いとも簡単に刺客は気絶する。
地面に倒れる前に青年は刺客を左腕で抱きかかえた。
「……ふむ」
刺客は明らかに女性であり、長い髪の毛をまとめるために、珊瑚の髪飾りをつけていた。
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