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「旦那様が暗殺されかけたことなんて両手でも数え切れませんし、その度に徹底的に撃破してきましたよ」
みつは続けた。
「今回、小夜さんをこうやってお手元に置いているのは、なんらかの意図がおありなのでしょう。しかし、それには決して、悪い意味はないと思います」
「わたし……」
ぽろ、と小夜の瞳から涙が落ちた。
「こんな風に人から優しくされたことがなかったんです。ここの家の人たちはどうして、」
「かんたんなことです。お人好しの集まりなんですよ。旦那様もあぁ見えて、懐の広いお方ですから」
「やぁやぁ、こんにちは」
「あら、春敬さん」
ふたりに割って入ったのは、片眼鏡の医師、春敬。
飄々とした様子で、片手を挙げて挨拶してくる。
「こ、こんにちは」
「おっ? だいぶ慣れてきたみたいだねぇ」
「いろいろと手伝ってくださって助かってますよ」
みつは、春敬にも金平糖を差し出す。
礼を述べると同時に、彼はがりがりと豪快に嚙み砕いた。
「まぁ。春敬さんったら、もったいない食べ方をなさいますこと!」
「この食感がたまらないんでさぁ」
頬を膨らますみつと、気に留めない春敬。ふたりのやりとりは年季が入っていて、軽妙だ。
「あ、あの!」
小夜はここに来て最も大きな声を上げた。
ふたりの視線が小夜へと集まる。
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