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「春敬さまは、その……怪異専門のお医者さまなのですよね? 陰陽道の基礎があれば、習うことはできますでしょうか……」
「おやおや?」
春敬は距離を詰めて、言葉に迷う小夜の顔を覗き込んだ。
片眼鏡が愉快そうに光る。
「お嬢さん、やけに積極的だね?」
「いえ、その……」
「おいらは構わないけれど、旦那が何て言うかな」
「そんなに張り切りすぎてどうする」
「ほら~。って、旦那!」
さらに現れたのは茂彬だった。
若干、呆れを含んだ声。
茂彬は珍しく、洋装に身を包んでいる。さらには前髪に整髪料をつけて後ろへ流し、額を露わにしている。
はしばみ色の瞳は、声と同じような表情をまとっていた。
「……申し訳ありません」
「いや。別に咎めているのではない。ただもう少し、余裕を持ってもいいのではないか。今まで休日らしい休日などなかったのだろう」
「旦那と同じで、真面目なんですよ」
春敬がのんびりと口を挟んだ。
「そういう旦那だって、この一年ほど、休日をとったのを見たことがないですぜ」
「……それは」
言い淀む茂彬に被せるように、春敬が両手を叩いた。
「あっ! 旦那、いっそのことお嬢さんと遠出でもしてみたらどうですか?」
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