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ぴくり、と春敬の眉が動く。
慌てて小夜は手を振った。
「おやめください。旦那様がお忙しい方なのは、春敬さんがよくご存知ですよね? それに、わたしなんかと」
「分かった。すぐには無理だが、調整しよう」
ところが、茂彬は春敬の提案を受けた。
(ど、どうして)
小夜は戸惑う。
医術を請うただけなのに、何故か、茂彬と出かける流れになっている。
先日の、仕事見学とは訳が違うのではないか。
そう言いたいのに言葉が出てこず口をぱくぱくさせていると、春敬が笑いをかみ殺した。
「お嬢さん、ほんとにかわ……面白いなぁ」
春敬が言い換えたのは、茂彬に睨まれたからであった。
「行く場所は旦那が考えるんですよ。お嬢さんは、外のことも流行も知らないんですから」
「……善処する」
「だってさ。よかったねぇ、お嬢さん」
「い、いえ、そうではなくて」
小夜はなんとか話題を戻そうと試みる。
「芦屋家に置いていただいているからには、人様のお役に立てるようになりたいのです。決して悪用などもいたしません」
「その点においては大丈夫だと思っている」
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