第二章 予兆

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 茂彬が帰ってくるということで、彼の好物を作ろうという話になったのだ。  いくつかの商店をまわり食材を調達。ふたりは大量の荷物を抱えて、家路を急ぐ。  留守番ではなく買い物に同伴することを希望したのは小夜だった。  小夜が外に出れば、綾子が何かを仕掛けてくる可能性は高い。  だからこそ小夜はありったけの防御を用意した。  綾子から虐げられるのは当然のことだと考えていた小夜にとって、考えられない行動でもあった。 「今日は小夜さんにも手伝ってもらいましょうかね」 「……いいのですか?」 「えぇ。旦那様が反対されていたのは、小夜さんに無理をさせたくない、ただそれだけのことですから」  小夜は胸をなでおろす。 「旦那様の好みの味付けも教えますね」 「はい。よろしくお願いします」  小夜とみつは顔を見合わせて笑った。  刹那、小夜は背筋に殺気を感じ振り返る。 「……!」 「小夜さん?」 「みつさん。わたしから離れないでください」  太陽はまだ高い位置にある。 (狙ってくるとしたら黄昏時以降だろうと思っていたのに)  小夜は懐から式札を取り出した。  周りの人々の様子は、何も変わらない。  ただ、確実に空気は変わった。
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