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茂彬が帰ってくるということで、彼の好物を作ろうという話になったのだ。
いくつかの商店をまわり食材を調達。ふたりは大量の荷物を抱えて、家路を急ぐ。
留守番ではなく買い物に同伴することを希望したのは小夜だった。
小夜が外に出れば、綾子が何かを仕掛けてくる可能性は高い。
だからこそ小夜はありったけの防御を用意した。
綾子から虐げられるのは当然のことだと考えていた小夜にとって、考えられない行動でもあった。
「今日は小夜さんにも手伝ってもらいましょうかね」
「……いいのですか?」
「えぇ。旦那様が反対されていたのは、小夜さんに無理をさせたくない、ただそれだけのことですから」
小夜は胸をなでおろす。
「旦那様の好みの味付けも教えますね」
「はい。よろしくお願いします」
小夜とみつは顔を見合わせて笑った。
刹那、小夜は背筋に殺気を感じ振り返る。
「……!」
「小夜さん?」
「みつさん。わたしから離れないでください」
太陽はまだ高い位置にある。
(狙ってくるとしたら黄昏時以降だろうと思っていたのに)
小夜は懐から式札を取り出した。
周りの人々の様子は、何も変わらない。
ただ、確実に空気は変わった。
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