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叫んだのはみつだった。
小夜が顔を上げるのと同時に、視界に入り込んだのは一羽の白鷺。
『小夜さんを死なせはしません』
みつの声は、白鷺から発せられていた。
神経を研ぎ澄ませていた小夜だったが、気を緩めてしまうほどの衝撃が走る。
「みつさん……あなた……」
(旦那様の式神だったなんて……!)
通常、式神というのは人間の視覚で認知することはできない。
しかしみつは街に出て買い物をしていた。
思業式神。
しかも意志があり自立しているということは、かなり上位の式神である。
白鷺は大きく羽ばたいた。そして、小夜と獣の影の間に浮く。
『へぇ。流石ね。この私でも式神だと気づけなかったなんて』
それでも綾子の声は弾んでいた。
『それで、どうするつもりなのかしら?』
『逃げます』
白鷺はきっぱりと言い切った。
小夜も我に返って、新たな式札を懐から取り出す。
みつの講じる策がどんなものかは分からないが、目指すものは同じ。
まずは綾子の結界から出なければならない。
『逃げられるものですか。あなたを捕らえて、芦屋茂彬の戦力を削がせてもらうわ』
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