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さらさら……。
白鷺が砂状になって消えると同時に現れたのは、まさしく芦屋茂彬だった。
小夜が見送ったときと同じ洋装。
「だ、旦那様……」
小夜は涙が出そうになるのを堪えて、唇を噛む。
茂彬は小夜へ視線を向けない。
その眼差しは凍りそうなほど鋭く、綾子の式神を見据えていた。
「藤田綾子か。会話するのは初めてだったか」
『さて、どうだったかしら』
細かな闇の欠片は再び空中で止まる。
綾子が攻撃の手を緩めたのではなくて、茂彬が止めているのだ。
その証拠に、欠片は僅かに震えている。
『ところで、どうやって堅物のお姉様を籠絡したのかしら?』
突然話を振られて、小夜は肩を震わせた。
『純潔でも奪ったのかしら? だとしたら、そちら方面の呪いを刻んでおけばよかったわ』
「あ、綾子さん、なんてことを……」
「妹君はだいぶ劣情的な人間のようだ」
ふぅ、と茂彬が息を細く吐き出した。
眉間に皺を寄せている。
「彼女はそのような対象ではない」
小夜ははっと顔を上げた。
同時に、ずきりと胸が痛むのを感じる。
(今、わたしはどうして……)
浮かんだ感情を振り払う。
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