第一章 選択

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 その通りだった。  あくまでも珊瑚の髪飾りは第一段階。さらなる仕掛けとして、小夜の命そのものに呪いがかけられている。  恍惚とした綾子に刻み込まれた、一生解けない呪い……。 「安心するといい。君を藤田家へ送り返すような無粋なことはしない」 「……え?」 「一旦、その身は芦屋家で預からせてもらおう。いいな?」  それは小夜にとって、青天の霹靂ともいえる提案だった。    ◆ ◆ ◆ 「はっはっは! まさか、お嬢さんが藤田一族だったとはねぇ!」  翌日、小夜の元を訪れた春敬は笑いながら言った。  小夜は小夜で、びくびくしながら春敬へ顔を向ける。 「あの……」 「ん? 何だい?」 「わたしを咎めたりしないのですか? 騙していたことに対して」 「旦那が咎めないことを、どうしておいらが? 第一、その新品の小袖は何だい」  春敬の指摘とは、小夜の着ている小袖にあった。  納戸(なんど)色に矢絣(やがすり)。どこからどう見ても、新しくあつらえたものだった。 「それは……その、旦那様、が」  呼び名は散々迷ったので、ぎこちない。  刃を向けたのは小夜とはいえ、攻撃を直に喰らわせたことの詫びとして、茂彬がみつを通じて用意させたのだ。 「似合う似合う。正直なところ、ぼろぼろで気になっていたんだ」 「そうでしたか……」 「で、今日はこれから旦那とお出かけだって?」  はい、と小夜は頷いた。  藤田家が茂彬を狙う理由、つまりは茂彬の仕事について説明すると言われていた。  小夜と春敬が話していると、そこへちょうど、茂彬が現れた。 「支度はできたか?」 「は、はい」 「では行こう。外に馬車を待たせてある」
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