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ジトリシとは字の一部分を切り取って取り憑いた悪者を取り除くもの。
字を取るという者という言葉だ。
悪に取り憑かれた人間に襲われそうになった小学6年生の文香(ふみか)。
ナイフを振りかざされた危機一髪の時、字取りの能力を持つ少年カンジが現れる。
カンジは心という漢字を唱え、心という文字を自らの手の甲にペンで書いた。
すると、ナイフを持った悪人面の男が急に優しい顔になる。
字取りの力で、悪い者に取り憑かれた男を元の普通の人間に戻したのだ。
その男はナイフを捨て、記憶がないような顔をしながらその場を立ち去った。
驚いた顔の文香。するとジトリシを名乗る少年カンジは笑顔で手を差し伸べた。
ジトリシは人間に取り憑く悪を取り除く存在らしい。見た目は同じくらいの年齢に見える。
「俺、字取カンジって言うんだ」
「ジトリカンジ君?」
「実は、きみと同じ小学校に転校が決まっていて、小学校に手続きに来たんだ。その帰り、悪者に取り憑かれた人間から偶然助けることができてよかった」
見た感じ、好少年で優しそうで強そうな感じがする。文香の名札を見たカンジ。
「明日から、クラスメイトだな。よろしく。あと、君、ジトリの力を持ってるな。そのままにしておくのはもったいない。よかったら俺の家にじいちゃんがやっている道場があるんだ。ジトリの訓練をしてみないか」
すぐそこの家は元々カンジのおじいちゃんの家。
引っ越してきたカンジはもっとジトリシとして訓練や修行を積むらしい。
道場に行ってみると、カンジのおじいちゃんがいた。
文香はジトリシについて色々説明された。
人間には悲しいとか憎しみとか怒りなどの感情があるが、それに取り憑く悪者がいる。
宿る漢字を見破り、悪者に取り憑かれた人を救うのがジトリシの役目らしい。
悲、怒などは心が漢字の中にあり、その中の心を取り除くと取り憑かれた人間は元に戻る。
その他、闇ならば音という字を取り除けば門になるので、悪者から救うことができる。漢字のバリエーションは無限にたくさんあるらしい。
衝動的に人間が事件を起こすのは悪者の仕業らしい。しかし、悪者の存在は謎に包まれているとのことだ。春に転校してきた闇城バケルはあからさまにカンジに嫌な態度をとる。もしかして、悪者と関係があるのか。実際、バケルは悪者のような言動をする。この町で最近事件が多発しているのは彼のせいだろうか。
バケルは鋭い目つきのクール男子。カンジは熱血な元気な男子。どちらも女子に人気がある。
バケルには秘密があり、結果的にバケルは悪者の一人だということだ。もちろん、悪者は日本全国におり、子供の中、大人の中に紛れて生活しているらしい。
バケルは生まれながらの悪者の血を引くもの。だから、彼は被害者であり、そうやって生きなければいけないと言う。
クラスメイトに悪者の一人のバケルがいて、ジトリシのカンジがいる。そして、文香もジトリシとしての才能を発揮する。そんな三人に徐々に友情が芽生えていく。
バケルは本当はきっと悪者から解放されたいのだろう。でも、絶対に弱音を吐いたり抜けたいと言わない。
悪者の存在は未だなぞに包まれているが、大昔から漢字を操り、人間に悪事をさせる者だという。もちろん人間ではないもっと大きな存在らしい。
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