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小学六年生の美空。地味女子で友達はあまりいない。勉強も運動もいまいちなタイプ。見た目もあか抜けないタイプ。ちょっと人見知りで物静かな美空の元に、イケメンな死神見習いがやってきた。少年の姿は他人には見えない。しかし、リジンと名乗る死神見習いは一時的に人間に見えるようにする力があるらしい。見た目は普通の人間とかわらない。
リジンは、性格は明るく、口は悪いがわりと優しい。元気のいい少年は死神となるために、不幸ポイントが高い美空を幸せな状態、つまりリア充状態にしてあの世に連れていくことが目的らしい。
「お前は幸せポイントが低い。俺はお前を幸せにした状態であの世に連れていけば、正式な死神として認定されるんだ。だから、俺のために幸せになってほしい」
「私、死ぬってことじゃん? しかも非リアだよ。幸せになる予感なんてゼロだよ」
「どうせ今は幸せポイントがほぼゼロだ。俺が幸せにしてやる」
「かっこいいセリフだけど、つまり……幸せにして私を殺すってことでしょ」
「殺すっていうと聞こえが悪いが、魂を連れ去るとでも言っておこうか」
「どっちにしても死ぬってことじゃん!!」
美空とリジンの不思議な関係がはじまった。
「人間が幸せに感じる時ってのを調べてみた。人間は、恋愛をして両想いになれば幸せになれるんだろ? 好きな奴はいないのか?」
「……」
頬が染まる美空。同じクラスの秀才で運動新景抜群の秋野柊人をずっと好きだった。
「告白しろ」
半ば強迫めいたリジンのセリフに後押しされ、小学1年の時からずっと憧れていた気持ちを伝えようと告白する。秋野は驚く。僕にはもったいないからと言って断られる。
しかし、放課後クラスメイトに告白されたと自慢げに話す秋野君は美空のことを悪く言う。
「あいつ、暗いし、6年間も想い続けていたって言われたらマジで引くって。キモイ」
美空は秋野が悪口を言っているのを聞いてしまう。悲しくて涙が止まらない美空。
すると――リジンが人間に見える力を使い、文句を言いに行く。
「美空はいい奴だ。おまえにはもったいない。だいたい、人に告白されたことを自慢するなんて性格が悪すぎる。おまえが好きな女子は小春だろ。目の前にいる一緒に悪口を言っている小春は二人の男と極秘で交際しているんだぜ? 何も知らない秋野はみじめだな」
リジンの優しさをし知る美空。小春の二股を知っていたリジンには人の心を知る力があるらしい。
「リジンとデートをしてみたい。そうしたら、後悔なしで死んでもいいかな」
戸惑うリジンだったが、人間の姿となり、週末デートをする約束をする。
「後悔なしで死ぬなんて言うな」
「死神になる人にとっては好条件じゃない?」
「お前は幸せポイントがゼロに近い状態だ。秋野なんて忘れろ。むしろ俺が忘れさせてやる。週末は楽しめよ」
命令口調のリジン。
週末の午前中にあえて待ち合わせをして人間になりすましたリジンと共にデートをする。デートと言ってもお互い何をしたらいいのかわからない。とりあえず、ファーストフードで食事をしたり、ゲームセンターに行ったり、公園を散歩したり――。意外と面白いリジンのことが大好きになる。
「リジンの幸せのためなら、私は犠牲になってかまわないよ」
美空の言い出した提案にリジンは辛い顔をする。
「バカ言うな。俺は、死神になることを辞める。じゃあな」と言い、二度と現れなくなった。
それは、リジン自身の死や消滅を意味するのか?
あなたに会いたい。気持ちが高ぶる。
一人ぼっちになった美空。以前よりも、虚しい日々だった。しかし、その一か月後――。
「理沢陣です」
一人の転校生がやってきた。リジンだ。しかも人間の小学6年生になっている。
気が動転する美空。
休み時間小声で耳の傍で囁くリジン。
「俺、死神じゃなく人間になる選択をしたんだ。そして、おまえの幸せポイントを高くしたら、神様候補になれるからさ」
「じゃあ、ずっと人間として生活するってこと?」
「神になるには百年以上かかる。たくさんの人を幸せにすれば神になるためのポイントが増えるらしい。つまりは、俺はおまえを最初に幸せにするってことだ」
頬が赤らむ理沢陣と美空。
「今のお前は幸せポイントがグッと上がったみたいだな」
幸せポイントが見える理沢陣は、今でも特別な能力は健在らしい。
そして、美空の特別な人となる。
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