イースターペインティング!

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はぁはぁ、と息を切らした女性が、玄関を開けた。 「おかえり」 「……ただいまぁ」 「走ってきたの?」 「そう……」 走った、とあるが、彼女はランニングウェアにスニーカー、ではなく、スーツにパンプス。なるほど、最寄駅から走ってきたのか。 「なんで走ってきたの」 「そりゃぁもちろん……」 そういって、リビングに駆け込み、抱き枕に顔をうずめる。 「明日が休みだもんねー、クリス!」 抱き枕の名前を呼ぶ姉。正確には、抱き枕に使われているキャラの名だ。 「……クリス」 「はいはい。『お疲れー』」 抱き枕に声を当てる僕。正確には、ただの姉の話し相手だ。声色も全く変えていない。ただ、それで満足らしい。 「あたしねぇ、今日までずぅーっと働いてたのねぇ」 「『そうなんだ。たいへんだったね』」 「それがぁ、明日は休みなのー!」 「『よかったね。それじゃあ、明日こそ行けるの?』」 「うん!あのクソ相手先がフライアウェイしたからねっ!」 「『フライアウェイ?逃げたの?』」 「逃げる……そのほうがよっぽどマシね」 「『ってことは、いつもの接待ゴルフが消えたの?』」ここ最近、土日は1泊2日ゴルフ旅行、と言う名の接待をしているんだとか。 「そのとおり!なんでも明日はあいつら全員社員旅行らしいの!」 「『へぇ』」 「あいつらさぁ、ホントに旅行好きのヤンキーなんだよな」 「『ヤンキー?』」 「私が飛行機苦手なのに無理やり社長ご自慢のプライベートジェットに載せるしさぁ、やったことないゴルフに付き合わされたと思ったらぁ、なんにも教えてくれないしぃ、そのくせぇ、振り方が変だとか、で笑いものにされるしさぁ……」 気付いたら、今週10回は聞いた話をされている。連勤マラソンも20日を超えるとこんなに壊れるのか。 ふと気づくと、愚痴が止んでいた。なるほど。今日も寝落ちだな。 姉に毛布を掛け、今日は目覚ましを付けずにいた。
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