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中1の夏休み。夏の終わりに2才上のお兄ちゃんが死んだ。兄の名前は鳴海空。海の事故だった。お兄ちゃんは見た目は茶髪でピアスを開けているけれど、心優しい少年だ。お葬式の後、私は、同級生であり、幼なじみでお兄ちゃんの自称弟子の舜弥(しゅんや)と共に泣きじゃくる。舜弥もお兄ちゃんの真似をして髪の毛は茶色く染めており、ピアスをしている。私と言えば、見た目は地味でお兄ちゃんとは正反対。実の妹なのに、あまり似ていない。
私と舜弥が手を取り合った瞬間、お兄ちゃんが死ぬ日の朝に戻っていた。その世界で悲惨な未来を知っているのは、舜弥と私だけ。誰もタイムリープしている人は他にいない。
舜弥が早速我が家に来て、お兄ちゃんが海に行くことを止めるべく、別な提案をする。花火大会があるから、夜に行こうと提案したのだ。花火大会までの時間は家でゲームでもしていようと提案する。お兄ちゃんは一人で海に行くつもりだったので、とりあえず納得する。安堵する私と舜弥。しかし、花火大会に行く途中に、トラックが飛び込んできて、兄が死んでしまう。多分即死だ。私と舜弥もケガを負う。流れる涙と共に、舜弥に手を延ばすと――また朝に戻っている。
舜弥と作戦を練る。お兄ちゃんを海にも花火大会にも行かせずに、家に滞在させようという作戦だ。早速、空兄の同級生に舜弥が連絡を取り、家に来てもらう。自宅でホラー映画を見ようという企画だ。自宅にいれば安全だと確信する私たち。そのまま夜になり眠る私たち。しかし――なぜか焦げ臭い。自宅が火災にあったのだ。何とか逃げられた。しかし、逃げ遅れた友達を救うためお兄ちゃんが自宅に戻る。正義感が強いので、お兄ちゃんはそのまま帰らぬ人となる。どんなにやることを変更してもだめだという絶望に立たされ、涙を流し、再び手を握る。
やっぱり、お兄ちゃんが生きている朝に戻る。タイムリープしていれば、再びお兄ちゃんに会えるけれど、死んでしまう場面を何度も見なければいけない。舜弥と私は頭を悩ませる。本人に説明して何とか、生きてもらおうとする。しかし、お兄ちゃんはにこやかに言う。舜弥と妹が死んでしまう未来を俺が代わりにタイムリープで救っていたと。もう一つの未来があって、お兄ちゃんは何食わぬ顔で私たちを助けていたと。だから、「何も起こらないなんてことはなくて、誰かが生贄にならなければ、ダメなのかもしれないし、タイムリープに限度がある可能性もある。でも、おまえらが死ぬ世界で生きたくないんだよな」にこやかに笑う兄は、茶髪をなびかせながら、「今度はどんな一日が来るのか、楽しんでみようぜ」と振り返った。
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