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好き、嫌い
ほら、見たことがあるでしょう? 一匹の星が空から落ちてくる様を。
彼の竜は空より来たりし運命の星。
何のことだって? ふふっ、間もなくわかるでしょう。
そういえばそこのあなた。あなたはご聡明なよう。ドラゴンが何を食べているかご存知でしょうか。
肉を食べる? ええ、もちろん食べます。草も水も雷も雲も、なんでも食べます。
ドラゴンも種類が増えましたからね。その食生活も住む場所によって様々なのです。
好き嫌いももちろんあります。人と同じですよ。
嫌いな物しかない世界では生きていたくありません。ならば好きな物がある世界へ行くしかないですよね。好きな物がある世界でなら生きていたくなります。ずっと、ずっと。
その好きな物を、好きな物がある世界を他人に横取りされたくない。だって、好きな物の数には際限があるのですから。貴重なソレを横取りされたくなくて、ドラゴンは乱暴に、横暴に、より攻撃的になります。
人も、そうでしょう?
ですが時に協力することもできます。互いに利を得るために力を合わせる。
そう、できるのです。
あまり知られていないようですが、ドラゴンが食べているものは本来なら物質ではありません。
彼らが食べているもの、好むものは「魔法」。奇跡や偶然、そのように私たちが不思議だと表現するものを大昔から食べているのです。
「魔法」とは奇跡が形となって起こったもの。例えば火をおこす、例えば雷を落とす、例えば花を咲かす、例えば別の場所から一瞬で移動する。それらを可能にしている力を人は「魔力」と名付けましたね。
それは人がそう名付けたにすぎないもの。獣や植物、妖精なども奇跡を起こします。それもまた大きな意味では「魔法」と呼ぶのです。
ドラゴンが食べるものは魔法を作る源ではなく、起こった結果。
水を湧かす泉ではなく、湧いて出た水を彼らは好むのです。全ては結果。実った果実。
ここには奇跡を起こす「魔法使い」がたくさんおります。今は魔法を使えなくとも、やがては奇跡を起こす。
皆さんはそういう存在なのですよ。
だって、ねえ。
母親の胎内から産まれ出て、そこまで育ったのですもの。奇跡以外あり得ません。
目が見えるでしょう? 音が聴こえ、言語を理解できるでしょう? 四肢が揃っていて、動かせるでしょう? 文字が書けるでしょう?
ワタシノコトガ、ワカルデショウ?
恐怖を恐怖と感じ、生きることに希望を見出だすことができる。
ソレだけで、あなたは奇跡なのです。誇りにお思いなさい。
今宵は星空瞬く美しくも冷たい夜。
まるで星が降って来そう。そう、落ちて来そう。
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