オナカヲスカセテ

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オナカヲスカセテ

ドラゴンという種族は大昔から「魔法を食べる」生き物でございます。 変わっているでしょう? それでいて神秘的。不思議に溢れた世界にこれ以上なく相応しい民ではございませんか。 ご覧くださいませ。空に輝くあの星を。 あれはドラゴンの卵でございます。今にも中から産まれ出てきそうな、ドラゴンの卵でございます。 なぜ私が笑っているのかって? だって、ねえ。あの卵、もうすぐ孵るんですよ。本当に。 そうしたら、中からドラゴンが産まれるんです。 オナカヲスカセテ。 生まれたドラゴンは空から地上へ落ちてきます。否、降りて来ます。 何をするために? 食事をするために。 お腹を空かせた生まれたばかりのドラゴン。 彼らが食べるものは? 魔法。 生まれたばかりのドラゴンは魔法を食べることができません。普通は、ね。消化できないそうなのです。 では、何を代わりに食べるのか。 魔法を生み出すものに決まってるでしょう? 今宵の赤ん坊はどの魔法使いを食べに降りて来る? どれもこれも選り取り見取り。 将来有望な魔法使いどもをご用意させていただきました。 さあ、楽しい宴の時間の始まり。 お客様は生まれたばかりのドラゴンちゃん。テーブルの上には「魔法」が詰まったニンゲンたち。 まもなく星の卵が孵る。 それは見た者の希望と絶望を詰めただけ大きく膨らむ。 まもなく星の卵が孵る。 竜は地上へ落ちてくる。 魔法と魔法使いを食べに、腹を空かせて降りて来る。 あなたを食べに、星が割れる。 あなたを食べに、卵が孵る。 生まれたてのドラゴンに食べられることは、あなたが魔法使いと見なされたということ。 たとえあなたが魔法使いの卵であろうと、卵から生まれたばかりの彼のドラゴンには関係ありません。あなたは魔法を、奇跡を起こすことができる人なのです。 だから空の星からでも、空に浮かぶ卵の中からでも、ドラゴンはあなたを見つけることができるのです。 さあ、おとなしく食べられなさいませ。 一筋の竜の星が雨のように流れていったようだった。 これこそまさしく竜星雨。
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