え？30になって相手がいなかったら結婚してくれるって言ったよね？

私が出した答え

「好きという気持ちがやっぱり捨てきれなくてここに来た。俺もこいつも」
蜂谷は主任をちらりと見る。けどその視線は棘が一切なく、弟を見るように優しかった。
「典子のことは俺が好きでいれば十分だったと思ったし、最初は俺の敵になるんだったら誰が相手だろうが潰してやろうと思った。けど典子を想う気持ちが本物で純粋すぎて…排除できなかった」
物騒な言葉が所々に紛れ込んでいるのに隣にいる主任はそれを軽く笑って聞き流している。心が広すぎるのか、肝が据わっているのか、すごいなこの人。私は聞いててひやひやものなのに。

「でもあの時と違って気持ちを押し付けたいんじゃなくて。好きになってほしいと勿論思いますけど、強引なやり方で気を引きたいわけではないんです。…僕たちは典子さんを困らせるために来たわけではありません。でもまだ恋してる気持ちは知っておいてほしいです。どちらも選べないとも、2人とも無理とも、いっそ2人とも受け入れるでもどんな結果でも僕たちは受け入れます。だからもう一度チャンスをいただけませんか？」